
実は冷え性と、夏バテ・熱中症は関係あります
「土用の丑の日はウナギ」は間違い
いまから1200年まえの奈良時代の短歌集『万葉集』に収められている大伴家持の歌に、「石麻呂に われ物申す 夏痩せに よしといふものそ 鰻取り食せ」があります。
石麻呂という痩せた医者に対して、ウナギをとって食べたらいかがですか、と述べた歌、と解釈されています。
いまでも、盛夏の土用の丑の日にウナギを食べる習慣がありますが、夏バテからくる「夏痩」には「栄養価の高いウナギ」というとり合わせは、昔からのようですね。
しかし、現代の夏を乗り切るには、ウナギを食べて、スタミナさえ補給していればそれで事足りる、という簡単な話ではなくなっています。
「夏バテぎみだったので、栄養をとろうと焼き肉を食べましたが、かえってだるくなりまし」と訴えてきた30代の女性は、日ごろから胃腸が弱い方でした。
さらに、室内外の温度差や、仕事のストレスなどで自律神経もうまく機能していない状態だったため、脂肪分の多い焼き肉を消化できずに、かえって栄養不足なカラダになってしまったのです。
こういうときは、胃に負担が少ない食べ物をとるように努めなくてはなりません。
また、「旬の食材」といえども、いまは注意が必要です。
スイカは、夏が旬の食材です。利尿効果があり、カラダの熱を冷ます代表的な「陰」の食材として、高温多湿の日本の夏にはもってこいです。
しかし、これは夏場に扇風機で涼をとっていた時代までの話。
もちろん、いまでも、胃腸が強い方や、冷えがない方、めったにクーラーにあたらない方なら、スイカを食べることをおすすめしますが、逆に、「スイカを食べるとカラダが冷えて体調が悪くなる」という方のほうが多くなってきているのが、現実です。
汗をかかない子どもたち
最近問題になっている、子どもの低体温化。平熱が34度台の場合もあります。
これも、クーラーの環境下で、能動汗腺が十分に発達していないことも原因のひとつと考えられます。
汗をつくりだす能動汗腺の数は、2歳半ぐらいまでの育った環境に左右されるといわれています。
たとえば、能動汗腺の平均数が、熱帯に住んでいる人よりも少ない日本人であっても、2歳以下のときに熱帯に住めば、能動汗腺数が現地の人と同程度にまでなる、という実験結果があります。
暑い時期、子どもに汗をかかせることも、将来の冷え予備軍をつくらないためには、大事なこと。
子ども時代の夏のすごし方は、おとなになってからの生活を左右するといっても、過言ではありません。
外出時は、「暑さ対策」は必須
これまでは、「現代版の夏バテ対策」をお話ししてきました。
しかし、営業などで猛暑のなかを歩く時間が長く、めったにクーラーにはあたらない方や、オリンピック選手とまでいかなくても、筋骨隆々で胃腸が丈夫な方は、従来からある夏バテ対策をしてください。
本来「夏バテ」とは、
外気が暑い
↓
発汗して体温を一定に保とうとする
↓
脱水状態
↓
水分補給
↓
脱水状態の改善
↓
外気が暑い
というサイクルを繰り返すなかで、
・水分を必要以上にとってしまい、体内の塩分量が薄まり、だるく、疲れやすくなる
・食欲不振で栄養価の低い、さっぱりとした食事が多くなり、カロリーや栄養素が不足す
・熱帯夜がつづいて睡眠不足になる
といった原因がいくつもかさなり合って生じるものです。
このような場合の昔ながらの対処法は、「水分摂取」と「栄養補給」が基本となります。
対策 水分摂取
夏場は、普段からこまめに水分をとるようにしましょう。
特に、汗をたくさんかいた後は、汗によって失われた塩分の補給も忘れずに。
ただ、スポー・ツドリンクは、汗をかいて体外にだされた塩分を補給するメリットがありますが、糖分の多さが気になる商品もあります。
また、緑茶や紅茶、コーヒーなど、カフェインが入っている飲み物は、ただでさえ、発汗によって自律神経のなかでも交感神経が優位になっている状態を助長し、かえって食欲不振や睡眠不足を招きかねません。
おすすめなのは、梅干茶、昆布茶のほか、ノンーカフェインのハーブティーのなかでも、さっぱりとしたミントティー。
ミントには、直接体温を下げる効果があるほか、交感神経の興奮を抑え、副交感神経を働かせる作用があります。
また、ハチミツとレモン果汁を入れたドリンクなら、レモン果汁に含まれるクェン酸が疲労のもとになる乳酸を分解し、またハチミツの適度な糖分が栄養補給にもなります。
対策 栄養補給
万葉集のなかでも詠まれたウナギは、疲労回復に効果があるといわれるビタミンB1が豊富に含まれているので、夏バテのスタミナ補給に、本来はうってつけです。
また、肉も必須アミノ酸を十分に含む良質なタンパク源。
とくに豚肉は、ウナギと同様にビタミン政含有量が多いです。
定食屋さんの定番メニュー「豚肉のショウガ焼き」。ショウガは、英語でgingerといい、「元気、活力、刺激」といった意味もあります。
疲労回復効果のある豚肉と、消化促進効果のあるショウガとの組み合わせは、夏場を元気に乗り切るためのベストコンビです。
もっとも、現代的、古典的いずれの対処法でも、飲みすぎない・食べすぎない・偏らないことは、いうまでもありません。