生理不順

生理不順と月経のメカニズム

そもそも生理とは

私達は女性の身体に定期的に起る病的ではない出血を慣例として生理と呼んでいる。

しかし、これは正式な呼び方ではない。

生理とは、本来、ごく当然のこと、道理として生体の身体の中で起る反応のことである。

英語ではphysiologyと綴る。

医学的に正しい用語である月経menstruation、女性器からの出血を直接表す語は社会通念上タブーとされる性の要素を想起させるため女性ならば誰にでも起きうることと言う意味で生理を用いるようになったようだ。

ドラッグストアの店頭などでも生理用品、生理用ナプキンと言う名称で売られている月経用品と言う言葉は見ない。

ただし、人口に膾炙した今では、生理と言う語も婉曲的表現にならなくなってきており、生理自体もタブー語になりつつある。

生理用品の製造元や、製薬会社等の中には生理期間中を「憂鬱な」と言う意味を込めてブルーデイと呼んで商品開発やコマーシャル展開をしているところもあるようだ。

言葉ではなく、肉体的な側面から見てみると、生理すなわち月経とは卵胞ホルモンと黄体ホルモンの相互作用によって肥厚になった子宮内の組織が剥離し少量の血液や他の分泌液と共に体外に排出されることだと定義できる。

この排血は女性にしか起らない現象で、月経周期にあわせて女性の体調は周期的に変化する。

近年の研究で男性の体調も女性とよく似た周期で変化することが分かってきたが、体調に影響を及ぼす卵胞ホルモンと黄体ホルモンの総量が女性に比べると少ないため変化も穏やかで本人すら気が付かないことが多いようだ。

何故生理が起きるのか

女性が迎える初めての月経を初潮、もしくは初経と言う。

大人になるにつれ腹部にあった精巣が鼠径を伝って徐々に下におり、精子をつくる能力を得る男性とは違い、女性は生まれた時から卵母細胞oocyteと言う卵子のもとを一定数有しており、一生に排卵できる卵子の数が決まっている。

この卵母細胞が分裂し卵子となり、それが十分に成熟すると卵管から子宮内に出る排卵が起こる。

女性の卵巣は卵管で子宮とつながり左右一対あるが、通常、左右どちらか片方だけから排卵される。

この卵子が性交によって男性の精子と出会い受精すると、子宮の内壁に定着し細胞分裂をはじめる。これが着床である。

この着床する部分は子宮内膜と言う三つの層からなる組織に覆われ受精卵にとって快適な環境となるように厚くふかふかにできている。

この卵子専用ゆりかごともいえる子宮内膜は、着床が起きず使われなかった場合、徐々に古くなっていくため一定の期間の後に剥がれ落ち一新される。

ごく標準的な生理の周期は月の満ち欠けとほぼ同じ二八日程度だと言われている。

剥離した子宮内膜を新しく張り直すのが女性ホルモンことエストロゲン、張りなおされた子宮内膜を分厚くし卵が着床しやすいようにするのが黄体ホルモンこと、プロゲステロンである。

プロゲステロンとエストロゲンは子宮内膜を維持する役割を担い、この両者の分泌量が減少すると子宮内膜の剥離が起きる。

月経は一定期間でゆりかごの布団を交換しているようなものだと考えられる。

月経サイクルと骨盤開閉

月経の名はそのサイクルが月の満ち欠けのそれに似通った周期性を持つことからつけられたものである。

生理が始まって排卵までの期間は卵胞ホルモンが優位に働くので卵胞期と呼ばれる。

エストロゲンによって卵子のもとである卵胞が十分に発育すると、卵巣から卵子が卵管を伝って子宮に下りてくる排卵が起きる。

排卵が起こると、それまでは分泌量ではエストロゲンに劣っていた黄体ホルモンが優勢になる。

二十八日から三十日のサイクルで生理が来る人ならば、約二週間で卵胞期と黄体期が入れ替わると言うことになる。月の満ち欠けに例えると排卵日がちょうど満月にあたる。

子宮、卵巣、卵管、膣等女性の生殖器は、腰部にある骨盤と言う大きな骨に包まれ、骨盤底筋と言う筋肉の集まりに支えられている。

そのため、これらは骨盤内臓器と呼ばれる。骨盤は左右に分かれ、恥骨のあたりで軟骨でつながっている。

これを恥骨結合と言い、この部分を中心に骨盤がしまったり閉じたりする。

妊娠の準備を整える卵胞期は骨盤がしまる高潮期、排卵が終わって生理に到る黄体期は骨盤がゆっくり開いていく低潮期にあたる。

骨盤は閉まりすぎると身体の緊張が取れなくなったりするし、緩み過ぎるとだるくなって何もやる気が起きなくなったりする。

高潮期、低潮期の長さは個人の体質によって異なるが、生理周期を整え、ストレッチなどをまめにすることで骨盤のしまりすぎ、開きすぎをある程度回避できると言われている。

女性ホルモンとは

エストロゲン、ゲスターゲン、女性の身体の変化に大きく関わるふたつのホルモンを女性ホルモンと呼ぶ。

エストロゲンは卵胞ホルモンと呼ばれ、生理終了間際から排卵までの期間分泌量が増加する化学物質である。

卵巣内の卵胞つまりは卵子のもとを育て、妊娠を可能にするホルモンだ。

生理によって剥がれ落ちた子宮内膜を新しく整えるのもこのホルモンの役割だ。

それだけではなく、エストロゲンは頭髪が抜けるのを防ぎ、肌の肌理を細かくし、乳房やヒップの張りを保つ役割もする。

毛髪以外の体毛に関しては成長を抑制する働きがあるとされているため、エストロゲンとよく似た働きをする大豆に含まれるイソフラボンは脱毛ローションなどによく配合される。

同様の働きをすると言われている植物にザクロ、プエラリアがあり、豊胸、美肌等の目的で食品や化粧品にその成分が配合されることがある。

対してゲスターゲンは、黄体ホルモンと呼ばれ、排卵から月経期前半まで分泌量が増える化学物質である。

黄体ホルモンと呼ばれる化学物質は幾種類かあるが、中でも有名なのがプロゲステロンである。

黄体ホルモンは妊娠状態を保ち、流産を防ぐ働きをするホルモンで、エストロゲンが厚くした子宮内膜の肌理を細かくしてふかふかにする役割を担う。

イメージとしてはエストロゲンが用意した卵子用ベッドをゲスターゲンがメンテナンスすると言った感じである。

両者のバランスが崩れると、無月経や、生理不順、月経困難症等様々なトラブルが起きると言われている。

生理はデトックス

私達の生理反応はその過程と結果によって代謝、消化吸収、排泄等いくつかのカテゴリに分類されている。

生理こと月経がどのカテゴリに含まれるかと言うと、物質を身体の外に出す排泄だ。

尿、便、経血などによって私達の身体は老廃物を体外に出し、全身の物質のバランスを保っている。

生理は、妊娠せずに使われなかった子宮内膜等の組織に蓄えらえた栄養を血液や体液と共に体外に捨てて、子宮内を覆う組織を新しくする行為でもある。

生理、経血の排出は妊娠期とその後暫くの期間または何らかの病気がある場合を除いて初潮を迎えた後閉経まで続くと言われている。

身体の捨てるものの量は取り込んで使わなかったものの量と正方向に比例すると言われている。

ダイエット等で過剰な摂食制限をすると捨てるものが減るため月経が止まってしまったり遅れてしまったりすることはよく知られているが、食べ過ぎ、飲みすぎ等があると、体が帳尻合わせのために老廃物を捨てるチャンスである月経の回数を増やし月に何度も生理が来てしまうことがあるそうだ。

肥満の人は標準体重の人に比べ生理不順になりやすいと言われている。

また、排卵後の黄体期に分泌される黄体ホルモンは体重を増加させる働きも有するので、月経のトラブルを抱えている人は突如体重が増えたりしてしまうことが多い。

該当する人は医師の指導の下に生理不順と月経トラブルの治療とともに肥満の解消をして、生理不順になりにくい体を作っていくことが必要になる。

生理不順とは

生理不順とは、月経の周期が正常の範囲を外れて遅れたり早く来たりする状態のことを示す用語である。

正常な月経周期とは、月経の始まりと月経の始まりの間が二十五日から三十八日の数値内におさまり、なおかつ出血を呈する月経期が三から七日程度で終わるものである。

これはあくまでも平均的な日数であり、人によって周期の長い短いがあるので多少これより長い短いと言った違いがあっても、定期的に月経が来ているのならば気にしすぎる必要はないとされている。

ただし、月経と月経の間が二週間ない場合は流石に短すぎる。

二ヶ月も間が空いてしまう場合は今度は長すぎだ。前者は頻発月経、後者は稀発月経の恐れがあるので一度受診をした方がよいだろう。

最も厄介なのは、月経と月経との間もしくは、経血の排出がある期間がその生理ごとにまちまちになるパターンだ。

いつ生理が来るか分からない状態では本人も気が抜けない。

周期の乱れの裏側に器質的な異常で排卵や子宮内膜の増殖が正しく行われていないと言う現象が隠れていることがあると言われている。

また、ある時点で生理が止まったままずっと来ない続発性無月経と言う現象もあるが、子宮や卵巣ばかりでなく、ストレスや不摂生で脳の視床下部や下垂体の機能が落ちた時にも起きるとされている。

生理が止まったと言う理由で受診する目安は三カ月。

三カ月生理が来なかったら受診した方がよいと言われているので、普段から月経周期の記録をつけておこう。

生理不順だと何故困る

女性の身体は周囲の環境の変化の影響を大きく受け、月経の周期も月によってわずかに誤差が出ることが多い。

毎月二十八日周期で来る人はかえって少ないようだ。

生理の重さには個人差があるが、多くの女性は体調に何らかの変化を感じ月経期には入浴、性交、運動等日常生活における不自由を感じることが多い。

中には、生理がなかなか来ない、またはまったく来なくても「手当をしないで済んで楽だから」と放置してしまう人もいるようだ。

筆者も女性なので、痛みや服の汚れを常に気にしながら活動しなければいけない煩わしさを厭う気持ちには共感できるが、それだけの理由で生理不順を放置してしまうのは安易すぎる。

明らかに生理不順だと分かっているのに、放置を続けると次のような事態が起きることが想定される。

まず、生理不順の原因となっている疾患を見逃し悪化させてしまうこと。

生理不順の裏側に子宮および卵巣のがん、性感染症、子宮内膜症子宮筋腫などが隠れていることがある。

いずれも軽いうちは治療も簡単な疾患だと言われているが、放置すると死や不妊症等、より重い事態を招きかねない。

また、排卵する卵子を持っている女性は生理が定期的に来ると言うのが生物としての正しいあり方だ。

男性に比べて女性の方が長く生きられる(平均寿命が七年ほど多い)のは生理のおかげと言う説もあるくらいだ。

生理に大きく関わる女性ホルモンエストロゲンは女性らしい体を作るホルモンであるので、生理不順を放置することはアンチエイジングや美容の観点からも良いことではないと言われている。

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